会社はいくらで売れる?M&Aの相場と仲介手数料の見方(売り手目線)
2026年6月時点の情報です2026年6月時点。「自分の会社はいくらで売れるのか」は、売却を考え始めて最初に気になるところです。値段の出し方にも、仲介会社に払う手数料にも、だいたいの型があります。まず全体像を押さえましょう。
会社の値段は「時価純資産+営業利益の数年分(年買法)」が出発点になり、仲介手数料は取引額の1〜5%程度(レーマン方式)が目安です。ただし、手数料を計算する「基準額の決め方」と「最低手数料」によって、最終的な手残りは大きく変わります。数字そのものより、その前提を確認することが大事です。
まず「会社の値段」はどう出すのか
中小企業のM&Aで、いちばんよく使われる簡単な計算が年買法(ねんばいほう/年倍法)です。考え方はシンプルで、「今ある純資産」に「これから数年ぶんの利益」を上乗せします。
企業価値 = 時価純資産 + 営業利益 × 数年分
- 時価純資産……帳簿ではなく、いまの実態に合わせた純資産(含み損益や簿外の負債を反映したもの)。
- 営業利益 × 数年分……「のれん」と呼ばれる、目に見えない価値(技術・取引先・人材など)。何年分にするかは通常2〜5年、中小では3年前後が多い目安です。
たとえば時価純資産1億円・営業利益5,000万円の会社なら、3年分で「1億円+1.5億円=2.5億円」が一つの目安。年数を4年にすれば3億円、2年なら2億円と、何年分にするかで価格が大きく動きます。
ここで正直にお伝えすべきことがあります。年買法は「営業利益の何年分にするか」を決める厳密なルールがありません。広く使われていますが、あくまで交渉の出発点をつくる簡便な方法です。実際にはこのほかにDCF法など別の出し方もあり、最終的な価格は交渉で決まります。
仲介手数料の仕組み(レーマン方式)
M&A仲介会社に払う成功報酬は、レーマン方式という計算がよく使われます。取引金額が大きくなるほど、かかる料率(パーセント)が下がっていく階段状の仕組みです。中小企業庁のガイドラインにも、典型的な料率の例が載っています。
| 取引金額のうち | かかる料率(典型例) |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円超〜10億円の部分 | 4% |
| 10億円超〜50億円の部分 | 3% |
| 50億円超〜100億円の部分 | 2% |
※会社によって料率は少し異なります。手数料の総額は、おおむね取引金額の1〜5%程度が目安です。ただし中小企業のM&Aでは最低手数料(目安として500万〜2,000万円規模)が決まっていることが多く、規模が小さいほど、取引額に対する実際の割合は5%を超えることもあります。
このほか、契約時の着手金・途中の中間金・毎月の月額報酬などがかかる会社もあれば、「着手金無料」「完全成功報酬(成約まで費用ゼロ)」の会社も増えています。
ここで損をしやすい(売り手が必ず確認すべき3点)
同じ会社・同じ価格でも、次の3点を確認したかどうかで、手元に残る金額が大きく変わります。
- ① 手数料の「基準額」が何か……レーマン方式の料率をかける金額が、「株式の価格だけ」なのか「負債を含めた総資産(移動総資産)」なのかで、同じ案件でも手数料が2倍以上変わることがあります。契約前に必ず確認してください。
- ② 最低手数料はいくらか……「成功報酬レーマン方式」と書いてあっても、別に最低手数料が設定されていることがあります。小規模なほど効いてきます。
- ③ 1社だけで決めない……2024年8月の中小M&Aガイドライン改訂で、仲介会社は手数料の基準や最低額を公表するよう求められ、中小企業庁の「登録支援機関データベース」で各社の手数料体系を見られます。比べてから選べます。
で、あなたは何をすべきか
- 自社の時価純資産と営業利益をざっくり把握する……年買法の出発点になります。おおよそで構いません。
- 手数料は「基準額の定義」を最初に確認する……ここが手残りに直結します。
- 1社で即決せず、中立の窓口+複数見積りで比べる……まず無料・中立の公的窓口(各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センター)で整理してから、民間に進むのが損のない順序です。
会社の値段は、相場の数字を当てにいくものではなく、前提を一つずつ確認して納得して決めるものです。急いで決める必要はありません。
参考にした公式情報(一次情報)
- 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(手数料の考え方・レーマン方式・基準額・最低手数料)
- 中小企業庁「M&A支援機関登録制度」登録支援機関データベース(手数料体系の公表)
相場の数字は、あくまで目安です。会社の値段も手数料も、業種・規模・交渉・契約内容で大きく変わります。とくに年買法は「営業利益の何年分か」を決める明確なルールがなく、簡便な出発点にすぎません。一つの会社や一つの試算だけで判断せず、中立の公的窓口や税理士に相談し、複数の見積もりを比べてください。
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