悪質な買い手・仲介から会社を守るには?売り手が知っておく手口と公的な防ぎ方
2026年6月時点の情報です2026年6月時点。会社を譲りたいと考えたとき、こわいのは「相手(買い手)」と「間に入る業者(仲介)」の両方です。でも国はこういうトラブルから売り手を守る仕組みを用意しています。手口と防ぎ方を順番に見ていきましょう。
M&Aには買い手・仲介の両方にリスクがありますが、多くは国(中小企業庁)の仕組みで防げます。やることは3つ──「M&A支援機関登録制度」に登録された業者から選ぶ、契約前に手数料や経営者保証の扱いを書面で確かめる、おかしいと感じたら国の「情報提供受付窓口」に相談する。急がせる・脅す・1社で即決させようとする相手は、危険のサインです。
こわいのは「買い手」と「仲介」の両方
会社を第三者に譲るとき、トラブルのもとになるのは大きく2つです。ひとつは買い手(譲り受け側)、もうひとつは間に入る業者(仲介・FA)です。どちらも、悪質なケースが実際に国から指摘されています。
ただ、こわがって動けなくなる必要はありません。中小企業庁(国)は、売り手を守るための仕組みをいくつも用意しています。まず「どんな手口があるか」を知り、次に「どう防ぐか」を押さえれば、多くの被害は避けられます。
悪質な「買い手」の手口
中小企業庁が公表している「中小M&Aガイドライン(第3版・2024年8月)」では、実際にあった不適切な買い手の例として、次のようなものが挙げられています。
- 経営者保証を外さないまま、会社のお金を抜く……「あなたの経営者保証は、譲渡後にこちら(買い手)が引き受けます」と言いながら実際には引き受けず、会社の現預金などの資産を移してしまい、支払いができなくなって倒産に追い込む。こうした行為が複数回くり返された例が指摘されています。
- 安い価格+保証引受けをセットで提示してくる……「経営者保証を引き受ける代わりに、安く譲ってほしい」という持ちかけ方は、とくに注意が必要だと国は呼びかけています。
- 契約した約束を、わざと守らない……最終契約(株式譲渡契約など)で決めたことを意図的に履行しないトラブル。第3版では、こうした買い手を市場から締め出すため、2025年2月に業界内で情報を共有する仕組みも整えられました。
身を守るポイントは、「経営者保証を、いつ・誰が・どうやって外すか」を契約書にはっきり書くこと。そして「安すぎる価格」と「保証引受けが前提」がセットで出てきたら、いったん立ち止まって専門家に相談することです。
不適切な「仲介・FA」のトラブル
間に入る業者でも、「仲介とFAの違いや手数料の説明を十分に受けられなかった」といったトラブルが起きています。とくに気をつけたい契約条項が2つあります。
- 専任条項……「うち1社だけにしか頼めません」という縛り。第3版は、この対象範囲はできるだけ狭くし、合理的な理由がなければ他の専門家に意見(セカンド・オピニオン)を求めることを認めるべきとしています。つまり売り手は「他にも相談していいですか?」と確認してかまいません。
- テール条項……契約が終わったあとでも、その業者が紹介した相手と成約したら手数料が発生する、という縛り。第3版は、対象を「その業者が実際に関与・紹介した買い手だけ」に限定し、期間も区切るべきとしています。内容・期間・範囲を契約前に書面で確認しましょう。
手数料そのものも、契約前に必ず書面で。レーマン方式の「何を基準に計算するか」や、最低手数料がいくらかは、業者によって大きく変わります。1社の言い値で即決しないことが基本です。
売り手を守る「国の仕組み」を使う
ここが一番大事です。トラブルを避けるために、国が用意した3つの仕組みを使いましょう。
- M&A支援機関登録制度(2021年8月創設)……中小M&Aガイドラインを守ると宣言した仲介業者・FAを国が登録する制度です。登録制度のホームページ(ma-shienkikan.go.jp)では、業者の種類・支援を始めた時期・所在地・最低手数料の水準や報酬の基準まで検索できます。業者選びの出発点にしてください。なお、事業承継・M&Aの補助金(専門家活用型)を使う場合は、この登録業者を使うことが条件になっています。
- 情報提供受付窓口……登録された業者の対応がおかしいと感じたら、国に情報提供できる窓口です(受付フォーム:ma-shienkikan.go.jp/inappropriate-cases)。ガイドライン違反が認められれば、その業者は登録を取り消されることがあります。
- 中小M&Aガイドライン……契約前の書面での重要事項説明、手数料の目安、契約のリスクなどを国がまとめた文書です。これを「正常な取引の物差し」として、目の前の業者の対応と見比べてください。
こんな相手は危険サイン
次のような相手・進め方が出てきたら、いったん止まって中立の窓口や専門家に相談してください。
- 「今すぐ決めないと買い手が逃げる」と急がせる/廃業の不安をあおる。
- 経営者保証の外し方を契約に書かず、あいまいにする。
- 手数料・専任条項・テール条項を書面で説明しない、質問を嫌がる。
- 他への相談や、公的窓口への相談を止めようとする。
- M&A支援機関登録制度に登録していない。
で、あなたは何をすべきか
- 業者は「M&A支援機関登録制度」の登録一覧から選ぶ。
- 契約の前に、手数料・専任条項・テール条項・経営者保証の扱いを書面で確かめる。
- 1社だけで決めず、まず無料・中立の公的窓口(各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センター)で全体を整理する。
- 対応に違和感があれば、国の「情報提供受付窓口」に相談する。
急かされても、立ち止まって確かめる時間は必ず取れます。順番に進めれば、大切に育てた会社を安全に引き継げます。
参考にした公式情報(一次情報)
ここで紹介するのは、中小企業庁が公表している一般的な注意点です。実際の契約書のチェックや、自社のケースで何に気をつけるべきかは、弁護士・税理士などの専門家に確認してください。また、相手選びや進め方に迷ったら、まず各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センター(無料・中立)に相談するのが安全です。
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ほじょをナビで探す →これは一般的な解説です。制度の適用可否や金額・窓口情報は個別の状況や時期で異なります。具体的な判断は税理士・専門家、または各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターにご相談ください。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。